少年時代 故郷から出るまで / 22歳 ドブネズミ達のハローワールド / 27歳 《月灯の羅針盤》店主
 
 

 

 

 

サイモフェン 22歳/177cm

身の丈に合わぬ剣を下げた子供を連れて、
街を練り歩く胡散臭い風体の男。

時折露店で装飾品を売っている様子も見かけるが、
売れている様子はない。

近づいてみれば、その青年は存外気安い印象で、
明るく多少は遠慮なく話に応じてくれるだろう。

夜の街で姿を見かける事が多く、
酒場に赴けば、彼が柄の悪い連中と盛り上がっている様子も見かけるかもしれない。

金を欲しがっている様子で、
儲け話に興味を示すだろう。

そんな彼は今、
国からの触れで"魔物の出る迷宮"の探索に赴いているようだが――


ドブネズミ達のハローワールド 参戦キャラクター


 story

 故郷を出て数年をのらりくらりと過ごしていたサイモフェン。
 陽光下の活動のし難さ故に、
 いささかタチの悪い夜の街で生活をしていたものの、
 面倒を見てくれる兄貴分や、夢にまで見た外の世界、
 楽しい都会の暮らしに、何の不満もなかった。

 ――しかし、それでも。
 故郷と断絶した彼だったが、
 兄妹のように育った12歳年下のルーナエの事は気にかかる。
 
 時折、はるばる故郷に戻り、日の高いうちに忍び込んでは、
 ルーナエに土産話をしてやるのも楽しみの一つだった。

「いつかお前も外の世界に連れてってやるよ。
 今はお前も小さいし、多分生活に苦労しかねーけど、
 楽しい事がいっぱいあるぜ」

 楽しげにそう持ち掛けるサイモフェンに、
 ルーナエはほほえみを浮かべて、ゆるりと頭を振る。

「にいさまのおはなし、いつもすてきですね。
 …でも、だめなんです。わたしは、《月のいとし子》だから」

「かーっ、お前は真面目すぎんよ。
 それってアレだろ、ゆくゆくは村長に…ってヤツ。
 そんな限界集落の村長に縛り付けられるなんて、
 人生終わりも同然じゃねーの」
 
 口を尖らせるサイモフェンに、ルーナエはまた微笑んで、小首をかしげた。

「いいえ、違うんです。
 みんな、にいさまには話していなかったんですね。
 …わたし、――月の女神さまの元にかえらなくてはならないから」


 
 サイモフェンはその時初めて知る。
 《月のいとし子》に与えられた、“人柱の宿命”。

 十五になる月、満月の夜。
 彼女は月の女神の元に召される。

 《月のいとし子》の存在は恵みと共に女神の元から授けられ、
 そして民たちは感謝を込めて、女神の愛娘を御許へとお返しする。
 それが約束なのだと。
 
 大空洞の祭祀場、月を望む美しく深い湖の中へ、いとし子は沈められる。
 そうして民は再び女神のもと繁栄を迎え、

 ――ただ一人の妹は、行き詰ったろくでなしどもの犠牲になる。
 

 たった一人の妹だ。
 俺の指を握って、歩いて、話して、必死に一人の人間として一つ一つ覚えて、
 そうして大きくなってきた可愛い俺の妹。

 ――冗談じゃない!


 サイモフェンには、金が必要だった。
 金だけじゃない、彼女を守れるだけの力が欲しかった。
 後ろ暗い自分と同じ世界に引き入れるには、
 この愛らしい妹はあまりに世間知らずで、純粋で、優しかった。

 なるべく早く、彼女を住まわせ、安全に暮らさせる為の場所が欲しい。

 時は過ぎる。

 砂時計の砂が落ちるように、
 抗いようのない時の流れを刻むように、
 月は満ちては欠けてゆく。

 彼は焦っていた。

 ――そんな彼の目の前に飛び込んできたのが、
 迷宮の発生を知らせる触れだった。

そうして参加した迷宮攻略。
そこで彼は、主を探して彷徨う護衛用ホムンクルス・ユピテルと出会う。

彼と共に行動を共にし始めたサイモフェンは、
命を賭した戦いの中で己の弱さと対峙し、
生き延びる為の彼自身の戦い方を会得していく。

 

 


 容姿にまつわるもの


  

hair : 天鵞絨(びろうど)色
eyes : あかるい金緑

身体的特徴は27歳とほとんど変わらないが、
おそらく受ける印象は大きく異なるだろう。

普段から遮光眼鏡は装着し、髪は結い上げている。
陽光への不安がある為か、この頃はまだ着衣も外套もしっかり着込み、
肌を出す事を恐れている様子がみられる。

姿勢も決して良いとはいえず、前屈みになって歩く様子が見られるが
これは無意識に陽光から身を守ろうとしているものと考えられる。
その他、夜の世界で生きるごろつき達に感化されているとも思われる。

表情は明るく快活だが、
精神的動揺もすべて顔に出てしまう面がある。
愛嬌は買われやすいが、反面信頼は得られ難く、
どちらかというと小物の扱いを受けやすい。
着こなしも挙動も全て馴染んでいない印象を与えるだろう。

それでも自信は尽きない為、
彼は彼なりに自信満々に自分を誇って生きている。



 仲間



最初の迷宮探索の中で出会った少年、
ホムンクルスのユピテルと行動を共にしている。

最初は子供だからと心配して声を掛けたユピテルだが、
その卓越した戦闘技術ゆえに、
サイモフェンにとってなくてはならない存在である。

剣としての彼に対する気持ちとは別に、
はじめてできた舎弟に気を良くしているふしがある。

元々面倒見がよく、子供好きなサイモフェンは、
ユピテルに子供らしく過ごさせてやりたい気持ちも強く、
祭りの日には身銭を切って服を買ってやるなど、世話を焼いている。

しかしながらユピテルは家事も治療も得手であり、
「子供らしくさせてやりたい」という面以外では完全に世話になっている状態である。

しかしながら「俺が兄貴でお前は舎弟」という意見は揺るがず、
自分が世話をしてやっていると思っている。
ちなみにユピテルも自分が世話をしてやっていると思っているらしく、
平行線の口喧嘩(?)が始まる事も多い。

基本的には自分の庇護者として可愛がっている。



 生活


闇の中で生きる洞窟の民の血を引くため、
陽光下での生活を避けている。

生活時間帯が夜~早朝の為、自然とガラの悪い者達と交流が深い。
手癖の悪い技術を学んだり、酒場で騒いで寝潰れるなど、
お世辞にも整った生活はしていない。

収入を得る為に盗賊ギルドへの出入りもしている。
耳聡く他者との交流能力が高いため、
情報収集に駆り出されることが多い。

なお、本人は細工品の腕に自信があるため、
時折露店を開いたりはするのだが、
本人の風体も相まって売れたためしがない。


そんな彼の生活も、収入の為に始めた迷宮攻略をきっかけに多少変化する。
攻略時に出会ったユピテルと普段から行動を共にするようになった彼は、
子供の前という事もあり、後ろ暗い活動や乱れた生活をなるべく自制している様子がみられる。

そして彼の類まれな戦闘能力を目の当たりにしたサイモフェンは、
彼と行動を共にするうち、冒険者として荒事にも首を突っ込むようになってゆく。


自分一人で身を守る術を確立していないため、
危険度が高いものは避ける傾向がある。


 人柄


表情豊かで、快活。
愛嬌があり他人に愛着を持たれやすいが、
痛い所を突かれると素直に顔に出すなど、隙の多い挙動をしている。
その気安さや遠慮のなさは、何でも許されてきた「待望の子供」であるが故と推察される。
その性質を買われ、軽い情報収集をさせられる事が多かった。

元々、故郷の保守的な風習を嫌っていたせいもあり、価値観の多様性には肯定的。
安易に相手は否定せず、その中で自分が何を選び取るかという事に重きを置く。
日の高い時間の仕事にはありつけず、まっとうな仕事で稼ぐ方法がなかった為、
裏稼業も比較的肯定的。

だが、それは裏稼業を相手取る場合に限られ、善良な他人を犠牲にしようとする事は嫌う。
自分の稼業が世間的に許されるものではないという事は、きちんと理解している。

自分好きな性質は昔からで、実力は伴っていなくとも自信過剰。
あまり引いた目で物事を見られず、すべてにおいて自分を前面に押し出していこうとする所がある。

それが行動の全てになるあまり、
彼の好むもの・行動が彼自身に馴染んでおらず、ちぐはぐな印象を受ける。
何か自分ではないものに憧れる思春期の少年そのものである。

何につけても派手好きで自分を前に出そうとする彼だが、
迷宮攻略、そしてユピテルとの出会いによって変化していく。

その大きなきっかけは、自身が死に瀕した経験である。
荒事とは縁のなかった彼も、迷宮攻略中に死に瀕する。
我を忘れて死にたくないと弱音を吐いた彼だったが、
敵前に躍り込むユピテルの小さな背中を目にし、サイモフェンは我に返った。

サイモフェンが生き延びる為に、
弟分であるユピテルを生かす為に、
サイモフェンは現実と、敵と向き合い、判断していく覚悟を固める。

今後の自分の行動の為に情報収集を欠かさなくなったのは、
それ以降である。

己が目立つ為ではなく、
生き延び、全ての事を上手く運ぶため、
他者も含めた最善のカードを切っていく方法を、彼は模索していく事となる。



 特性


 strong point
 夜目がきき、手先が器用。
 人懐こいため、情報収集に向く。
 感覚が鋭く、勘と運が良い。探索・調査向き。


 weak point
 経験不足ゆえに状況判断力に欠ける。
 陽光を避ける傾向があり、光の強い場所では竦みやすい。 
 戦闘面では特筆すべき能力がなく、足手まといになりやすい。



 skill 石の加護


 その出自から、鉱石に波長を合わせて発動する力を使う事が出来る。
 自分の感覚を研ぎ澄ませる程度の扱いしかしておらず、
 戦いの場で使うにはまだ洗練されていない。


 skill 石の加護ex1:守護石クリソベリル


 故郷で子供の頃に守護石として与えられたクリソベリルの力故に、
 微かな予知能力を見せる事がある。
 しかしながら意図的に扱う事はあまりに難しく、
 多くの場合は「勘の良さ」として不意にあらわれる。


 skill 石の加護ex2:石の声


 鉱石に波長を合わせる事で、
 残された記憶を微かに読み取る事が出来る。
 痕跡は断片的。



 その他


 自尊心が高いが、現実として女性にモテていない為、
 なぜ自分はモテないのだろうかと疑問を抱いている。

 彼に客観視という癖がつくのはもう少し後の話である。


 
 

少年時代 故郷から出るまで / 22歳 ドブネズミ達のハローワールド / 27歳 《月灯の羅針盤》店主

RETURN